ファッションの色域


すべての色域を自由に

現在のファッション分野で使用される色の範囲は、ほぼ全域に及びます。固有の服装文化や着こなしのルールを別にすれば、タブーとされる色は存在しません。全色相にわたって高彩度域だけでなく低彩度域、さらには、ファッションカラーの分野でニュートラルカラーと呼ばれるニュアンスを持ったグレーなどの色域も使用されます。

私たちの日常的な生活文化の中では、通常、ピンク、ブラウン、オリーブの各色は、それぞれレッド、オレンジ、イエローのグループに属さず、独立した色として認識されていると思いますが、この認識が明確に表れているのがファッションカラーです。

このファッションカラーの代表的なカラーシステムと言えるものが、JAFCA(日本流行色協会)が発行しているJBCCJAFCAベーシック・カラーコード)で、このJBCCでは、ピンク、ブラウン、オリーブは独立した色相として扱われています。

 

ベーシックカラーとファッションカラー

ファッションのカラーは、色彩の全域を対象としますが、その一方で、使用される頻度には大きな偏りがあります。この使用色の偏りは、ファッション分野に二通りのカラーの使い方があることに起因します。この二通りの使い方とは、皆さんがご存知の「ベーシックカラー」と「ファッションカラー」があることです。

「ベーシックカラー」は、文字通り、ワードローブの基本となるカラーで、ベージュ、ブラウン、ネイビー、ホワイト、グレー、ブラックなどが中心色となっています。これらのカラーは、常に市場にある色、常に売れる色と言え、一般的には、業界内では売れる色の75%をベーシックカラーが占めると言われます。

「ファッションカラー」は、「流行色」と呼ばれて、その時々のシーズンで特徴的に受け入れられた、ないし、受け入れられるであろう特定の色を指しています。常に市場に存在するカラーではありませんが、そのシーズンを代表するカラーとして出現します。

色としては、全色相の高彩度色だけでなく、ホワイトやブラックなどの場合もありますし、2020年の秋冬シーズンのように、ベージュやブラウンなどがファッションカラーに加わることもあります。

また、イエローやヴァイオレット、ブルー・グリーンなどの、ワードローブにはあまり使用されない色が、流行色として、あるシーズンの売り場や街を彩ることもあります。

以前には、ファッションカラーは目立つ一方、売れる色の三番手止まりと言われていましたが、ブラックやホワイト、ベージュなどのベーシックカラーが売れ筋となる場合は、往々にしてこの原則には当てはまらなくなりました。


ブラックの氾濫

原宿などを代表とする日本のストリートファッションが世界のファッション関係者の注目を浴びているのは周知の事実です。それというのもジャパンファッションそのものが、欧米のファッションとは大きく異なっていて、若者主体の日常着を中心にするカジュアルファッションをその特徴としています。

このような欧米との違いはファッションカラーにおいても存在します。中でも、日本のファッションシーンではブラックの突出が特徴的です。この傾向は、1983年の川久保玲と山本耀司によるパリコレでの黒の衝撃を受けて、「カラス族」と呼ばれた黒いファッションが大流行した結果、日本人のワードローブにブラックが定着することになりました。その後のブラックの隆盛については多くの方がうなずけると思われます。

実際のファッションシーンで、シーズンを問わずにこれほどブラックが着られる国は世界のどこにもありません。ストリートファッションでも、表参道において、ブラックは常にリードカラーとして着用されています。

 

ブラックの出現率

 下記の図は、日本色彩研究所が1953から銀座中央通りで行なっている女性服装色の定点観測における

 BLACKの出現率の変異です。80年代からBLACKはシーズンに関係なく出現していることが分かります。

 そしてこの傾向は、今に至るまで継続しています。



ピンク大好き

近年、日本人のピンクへの嗜好が強まって、多くの生活シーンで見受けられる色になりました。

1999年、トヨタのVITZがピンクを採用。

2000年春夏、ファッションシーンでピンクが大流行。

2007年、日産MARCHサクラと名付けたピンク

販売して、ピンクが乗用車に定着。

「PINK男子」(JAFCA季刊誌『流行色』より)


2009年、メンズファッションでピンクが流行して「PINK男子」が登場。

以後、携帯やデジカメにも広がっていたピンクは、今ではファッションシーンを越えて、日本の生活シーンにおけるベーシックカラーになりました。なお、欧米のピンクは「ローズピンク」を指しますが、日本人のピンクは「桜」のピンクで、薄い色調であることが特徴になっています。


JBCCJAFCA BASIC COLOR CODE)全267

JBCCは、ファッション分野で使用されるカラーも多く取り入れられている、全267色を系統的に整備したカラーコードです。色相とトーン別にマトリックスで一覧できるようになっていて、色相の区分にPINKBROWNOLIVEが入れられています。

色の集計、統計用のカラーコードとして幅広く活用で

きるものです。

JAFCA発行・販売



JCC40JAFCA COLOR CODE40

 JCC40は、「JBCC」をベースに、主要な産業分野で多く使われる色彩を、系統的に40色に分類したカラーシステムです。カラーを効率的に整理分類することが可能で、アパレル業界、レザー業界のPOSシステムにも採用されています。

 (JAFCA発行・販売



ASIAN BASIC COLOR 2005

 「ASIAN BASIC COLOR 2005」は、2005年に、主にファッション製品を対象とした日中韓3カ国のベーシックカラーを、インターカラーに参加する韓国カラー&ファッショントレンドセンター、中国流行色協会および日本流行色協会(JAFCA)の3団体と日本ファッション協会により選定した貴重な資料です。

 左の列から日本、韓国、中国のベーシックカラーが並んでいて、日本のベーシックカラーでは、白、グレー、黒、紺、ベージュ、ブラウンに、近年男女の別なく好まれるピンクが加えられています。

 (JAFCA・日本ファッション協会共同発行