調査研究/RESEARCH

色の仕事における第2の業務としては、色という情報を扱う仕事である、好きな色売れる色などを調査・研究する業務が挙げられます。

色彩学の分野では、色を情報として調査・研究することは重要な業務で、色彩にかかわる教育者、研究者による色彩学会などがその任を担っていますが、一方のカラービジネスの分野でも同様に、重要な業務の一つとされます。

カラービジネスにおける調査・研究業務は、カラー・プランニングの前段階に位置する業務が多く、新たな商品を企画して販売を行うための論拠や根拠、手応えなどを求めようとするものになります。そのために、国や民族といった大きな対象から、地域や年齢、個別のグループといったより絞り込んだクラスターに至るまで、対象別に色彩の嗜好や評価などについて調査、研究、把握することが行われています。

その上、色彩は日常生活のあらゆる部分で私達とかかわっていますので、科学や芸術、心理、生理、文化、歴史、教育など、広範な領域からの理解や解釈も求められます。


●カラートレンドの創出

(一社)日本流行色協会(JAFCA)が年2回発行する「JAFCAファッションカラー」は、ファッション業界を越えて、化粧品業界や自動車・プロダクツ業界などの色彩計画の指針になっています。

このようなトレンドカラーは、一年半先のシーズンに国内で流行るであろう色を、現在時点において予見するという困難な検討作業によって導き出されています。

この予見作業は、国内生活者の志向やマーケットの調査、動向の分析・把握を基に、各分野のカラースペシャリストたちによる見識の重ね合わせと熱気のこもった討論により実現しています。

 

●カラー・プランニングに向けた情報発信

代表的なカラーコンサルタント企業の一つである㈱日本カラーデザイン研究所(NCD)が発行するマーケティング&トレンド情報誌「イメージ情報」は、プランニング業務に直接役に立つような市場や時事的事象、人々の好みの変遷などのデータや、これからの市場や消費者の気分を予測した色やイメージなどが掲載・提案されています。そして、企画やプレゼンテーションに応用できるこれらの提案は、日本カラーデザイン研究所の蓄積したノウハウとデータによって生み出されるものなのです。


●色彩の調査/COLOR SURVEY

ファッションアイテムや工業製品、食品のパッケージといった特定の専門分野においても、それらの専門企業の構成員である色彩企画担当者の判断で、企業内資産による調査に留めることなく、総合的なカラーコンサルティング企業に必要な調査研究を外注することは、現実にはしばしば見受けられるものです。

このような色彩の調査研究については、世界的な存在である(一財)日本色彩研究所を筆頭にして、数は少ないのですが、前述のNCDのように、豊富な専門スタッフと広い人脈、蓄積された経験やデータを土台にして優れた実績を誇る団体・企業が日本に存在しています。

 

●海外調査/INTERNATIONAL COLOR SURVEY

色彩の嗜好やイメージは民族や文化によって大きな隔たりがある場合が多いので、国境を越えてビジネスを推進するには、その国の文化や宗教、地域などの色彩特性を把握する必要がありますし、中でもタブーとなる色使いには注意しなければなりません。ただ、このような海外を調査対象とする業務は必然的に少なく、調査できる団体や企業、プロジェクトも限られています。

海外の色彩調査の代表例としては、当時、武蔵野美術大学造形学部教授だった千々岩英彰(ちぢいわひであき)氏が、日本政府の後援のもと、平成 78 年にかけて行われた20ヵ国、60 のデザイン系の大学における5,375 人の学生を対象にした、世界初の大規模色彩調査が挙げられます。質問票と色見本帳を与えるという形で行われたこの調査の結果は『図解 世界の色彩感情事典』(河出書房新社1999 年)にまとめられています。

その他のデータが公開されている海外調査では、一般財団法人日本色彩研究所と一般財団法人日本ファッション協会が共同で行った、67色のカラーチャートによる、「日本・中国・韓国」の同時調査と、引き続いてロシア、インドで行われた一連の色彩意識調査の報告が挙げられます。

その後、日本色彩研究所は、この67色のカラーチャートを基にして、「タイ(2013)」と「インドネシア(2014)」で単独の色彩意識調査を実施しています。

 

この他にも、株式会社日本カラーデザイン研究所などの代表的なカラーコンサルティング企業は、それぞれに同様の海外調査を実施して、その調査データを蓄積することで、自社の業務に活用しています。

その一方で、日常的に行われる色彩調査の大半は日本国内で実施されています。性差や年齢といったクラスターごとの特性把握から、現在時点における市場色の動向調査などは日常的に行われます。

一般にトレンド情報と呼ばれる将来予想的な情報が存在する業界では、それらの情報を入手、読み解くこともカラー・リサーチの中心業務の一つになります。ファッション業界のような日常的にトレンド情報を消費する業界では、カラートレンドに関わる業務が重要視されることは、容易に了解いただけると思います。


●一般財団法人日本色彩研究所と一般財団法人日本ファッション協会による海外調査例

①『日韓中 三カ国による初の色彩共同調査報告書』2005

 2004年に日韓中(東京・ソウル・北京・上海)の男女大学生1662名を対 象にした、色彩嗜好や商品所有色などに関する大規模調査。色彩につい

 ての三ヶ国の若者の意識や色彩 環境の相違点などが把握できます。

②『ロシアの色彩意識調査』CD-ROM2009

 ロシア/モスクワ・サンクトペテルブルグの大学生390名を対象にした  アンケート調査

 実施日: 200811

③『インドの色彩意識調査』CD-ROM2009

 インド/デリー・ムンバイ在住の1529歳の男女394名を対象にしたイン

 ターネット調査

 実施日: 200812