日本人の色彩感覚の底流

色彩&ファッションアナリスト 山内 誠

日本人の色彩感覚を見つめようとすると、その背景にある日本人の美意識や生活意識に触れなければなりません。ところが私たち「日本人」という存在は、世界の人々とは大きくかけ離れているとしか言えないようなのです。この風変わりな日本人の色彩感覚について、その底流に流れる日本人の独自性から追ってみましょう。


1.色を生むもの

日本人の色彩感覚を見つめようとすると、その背景にある日本人の美意識や生活意識に触れなければなりません。ところが私たち「日本人」という存在は、世界の人々とは大きくかけ離れているとしか言えないようなのです。この風変わりな日本人の色彩感覚について、その底流に流れる日本人の独自性から追ってみましょう。

 

2.自然の色

日本人の持つ色彩感覚は、CRTや液晶などの発光体が日常化した現在の環境の影響を受けることで、日々変化しています。その一方で、日本人の色彩感覚には、日本の豊かな自然――それも鮮やかな四季の移り変わり培われた、ゆるぎない土台が存在し続けていることは確実です。

 

 

3.うつろう色

大衆化されたファッションという視線で眺めれば、日本が世界一のファッション大国であることには異論が無いと思います。東京のストリートファッションは、エレガンスの王道を歩む世界のクリエイターからも注目されています。カラートレンドの存在とその積極的な利用も、日本というファッション大国の性なのでしょう。

 



4.kawaii色

2011年春夏シーズン向けのインターカラーの決定色に、少女的な感覚のライトカラーの色群が選定されました。1963年に設立されたインターカラーの長い歴史を通じて、少女的な色の選定は初めての出来事だそうです。日本の子ども文化の反映である「kawaii」は、「COOL-JAPAN」の代表として、世界中に広まっているのです。

 

 

 

5.素材の色

ここまで4つのテーマで日本の色彩感覚を見つめてきました。中でも「自然」「うつろい」「kawaii」という特質は、日本人の色彩感覚の独自性を支えるものでした。日本人は、自然を手本にして高度で繊細な色彩感覚を培い、その能力でゆたかな色彩文化を築いてきました。

ところが、この高度な色彩感覚が発揮できる領域はかなり偏っているように思えます。誤解を恐れずに言えば、日本人の色彩感覚は「素材」の領域に限られているといえそうです。