ファッションの色彩

ファッションのカラーは、単に服飾領域を対象にする場合の他に、「今」という現在性に支えられた時代の先端の表現を求められる場合があります。制服や伝統服・民族服の分野では、カラーの持つ文化的意味や機能性が問われます。その一方で、時代の先端を走るファッション領域では、その時代時代の息吹を捉え、その息吹を鮮明に感じさせるカラー表現が重要です。

そのために、カラー分野においても常に変化を意識し続ける必要があるのです。常に新鮮な表現が求められるファッション分野におけるカラープランニングは、幾つもの分野に分かれて遂行されています。

ここでは、以下の3つの分野に分けて説明しておきます。なお、パーソナルカラーの分野は、ファッション領域に含まれるものとして、このサイトで解説しています。

ファッションの色彩

最初の分野は、ファッションデザインに代表される「ファッション(アイテム)のカラー」です。ジャケットやスカートといった単品アイテムのカラーから、着こなしのためのカラーコーディネートやブランディングにいたるまで、カラーによる魅惑の表現が強く求められる分野であり、美意識や生活意識、地域性、民族性、社会性などの幅広い文化背景が係わる分野でもあります。

さらに、メンズ、レディス、ジュニアなどの性・年齢による区分、アクティブスポーツや水着、フォーマル、カジュアルといった分野ごとに求められるカラーが異なっています。カラープランニングの業務では、アパレルメーカーを中心として、主に春夏、秋冬の年2回のシーズンを基本に、細分化された季節に沿った企画が行われます。ただ、カラーだけを扱う独立したカラリストは日本にはほとんど存在せず、カラープランニングは、一般的に、デザイナーやマーチャンダイザー(MD)の業務の中に含まれています。


 

 

ファッションのカラーを演出する減法混色

ひと口にファッションのカラーと言いますが、ファッションアイテムにおけるカラーそのものは染色された素材によって表現されています。そして素材のカラーは、ほぼ染料による減法混色のルールに従うことになります。

通常の染色では、複数の染料による混色によって求める色を発現することになりますが、現在の発達したコンピュータ・マッチング技術でも1回で求める色を得ることは困難で、数回の試色が必要になります。



素材の色彩

2の分野はファッションアイテムを構成する「素材」のカラーで、テキスタイルデザインはその代表的なデザイン分野です。糸や生地などの、質感を伴う素材色という、識別が困難なほどの微妙な色差が重視される、原材料の色や性質、染織技術などを中心にした物づくりのためのカラーの世界です。

また、ワークウェアやアクティブスポーツウェアなどの機能素材の分野では、固有の色使いが見られます。素材のカラープランニングについては、テキスタイルデザイナーの仕事になる他は、前述のように、衣服のデザイナーやMDなどの業務に含まれています。



情報としての色彩


最後の分野は「情報」としてのカラーです。この「情報」のカラーは、ファッション領域では重要な分野であり、その代表とされるのがトレンドカラー(流行色)です。このトレンドカラー(情報)は、現在のファッション化社会では、服飾領域を越えて生活のあらゆる領域で注目されるようになっています。

トレンドカラーの他、調査や売れ筋色のデータといった「情報」としてのカラーは、通常、実際色ではなく、既存の色票や色域を表現するような概念の色として語られることが多い分野です。トレンドカラーを扱う業務は、企業の企画セクションや、独立した企画会社などが遂行します。この業務も、純粋にカラーだけを扱うのではなく、多くは、素材やスタイリングなどのファッション情報業務の一部として存在しています。

●トレンドカラー

ファッション分野には、将来市場で流行するであろう予測色が存在します。この予報的な色彩情報は、ファッション、インテリア分野に限らず、さまざまな商品のクリエイターに向けて、その時期に注目されるカラーの大まかな傾向やインスピレーションの源になるように提供されます。

このような情報を参考にしてさまざまな商品が作られることから、トレンドカラーが反映したカラーの商品が、店頭に並び、流行することになるのです。もちろん、社会的事情などにより予測が外れることもありますが、カラーのプランニングにとって、大きな参考になるものです。

このようなトレンドカラーは、現在の市場動向を踏まえて、社会・経済的な動きや、消費動向、生活意識、美意識の変化の兆しなどを捉えて予測されます。下記に、主なトレンドカラー情報を紹介します。

 

●インターカラー

「インターカラー」は世界で唯一の国際的に流行色情報を発表する機関で、春夏、秋冬の年2回、検討会議が開催され、日本からはJAFCAが代表団体として1963年の設立当時から参加しています。この「インターカラー」は、14カ国の代表による、シーズンの2年前という最も早い時期に開催、決定されるトレンドカラーとして、その後の世界のカラー動向に大きな影響を与えています。

 


●JAFCAカラー

各分野の動向に精通したカラースペシャリストが集い、「インターカラー」の傾向を参考にしながら、日本の市場動向を的確に捉えたトレンドカラー情報を選定しています。 JAFCAカラー」は、レディス、メンズ、プロダクツ・インテリア他の分野別に発行しています。

 


●季刊『流行色』夏号・冬号

JAFCAが発行する『流行色』誌は、年4回発行する色彩情報誌です。百貨店・量販店におけるシーズンごとの調査により、売れ筋色データを解説するとともに、デザイナーズコレクションや世界各地で開催される展示会の動向なども解説しています。JAFCAで発行するトレンドカラー情報だけでなく、インターカラー、海外トレンドカラー情報などもこの一冊で知ることができます。

 



マーケットの色彩

市場動向を把握することは商品企画の基本です。過去の流行色や現在の売れ筋色を知ってはじめて、次のカラープランニングが可能になります。 マーケットカラー情報は、多くの団体・企業から提供されています。

例えばJAFCAの季刊『流行色』の春号・秋号ではそのシーズンの市場で売れた色やストリートで見受けられた色を紹介しています。

 

担当:山内



パーソナルカラー

パーソナルカラーとは、人それぞれの身体色を導き出し、色彩調和論を背景にその人の魅力を発揮するカラーやファッションのコンサルティングを行う仕事です。 近年、この分野のカラリストの活躍で、一般の方々の色彩への興味が高まったことは、カラービジネスの世界への大きな貢献となりました。

パーソナルカラーは、1920年代のロバート・ドア(米)によるブルーとイエローの2色の調和論に始まるカラーコンサルティングにその起源があると言われます。その後、春夏秋冬の4シーズン分類法が提唱され、広がって行きます。

1980年代に入って、パーソナルカラーは日本に紹介され、肌の色や瞳の色が似通っている単一民族の特徴に沿わせながら、独自の流れが形成されて現在に至っています。

 

担当:山内 誠